二世帯住宅失敗別居を防ぐコツと工夫
二世帯住宅を新築される方。二世帯住宅へリフォームされる方。こうした方が増えています。
世の中の先行きに不安を持っているからという人もいれば、同居することでお互いに安心感が増えるという理由の人もいらっしゃることでしょう。
どんな理由であれ、二世帯住宅に住み始めると、大変上手くいくところもあれば、失敗して別居になってしまうというところもあります。
今回は、せっかく二世帯住宅にしたのに、失敗して別居を選ぶ必要がないよう、先に防げることは対策しておく。そんなコツと工夫をお話します。
Contents
1: ネットで見かける「失敗談」
インターネットを使って検索してみてください。二世帯住宅で失敗したというお話が出てきます。
こういうケースでもっとも困ったことになるのが
- 住宅ローンが残っていること
- 親子関係が修復できないくらい悪化すること
- 別居するにもお金が必要になること
本当に、こういう状況になってしまうと、お互いの生活を守ることが第一になりますが、そのためには「お金」が必要になり、なかなか別居という選択肢も難しくなります。
また、別居までは考えていなくても、ストレスが溜まってしまい、毎日憂鬱な気分で過ごしている。そんな人もいらっしゃるようです。
こうした「失敗」のケースですが、完全にゼロにすることはできません。人は時間が進むことで性格や考え方が変化しますので、今は良くても将来はどうなるのかわからないからです。
しかし、ゼロにできなくても、ある程度は失敗談から学び、コツと工夫で対策することはできます。
2: 失敗談から学べることとは
失敗談が簡単に見つけられるようになっていますから、先に学んでおきましょう。
(1)完全分離と別居の違い
失敗談で登場することの多い「生活スタイル」の違い。
この失敗の原因は「二世帯住宅」の中でも独立性が高い「完全分離」を、「別居」と同じ印象で考えておられることだと思います。
確かに完全分離タイプの二世帯住宅は、お互いに独立した生活空間になっていますので、他の二世帯住宅のタイプよりは「別居」に近いです。
しかし、完全分離タイプをよく見てもらうと「賃貸アパート」と同じように、ひとつの建物の中に、二世帯が共同で住んでいる状態です。
これが賃貸アパートや、分譲マンションであるなら、お互いが他人なので気配りや気遣いも出てきます。でも、親子だったらどうでしょう。言わなくてもいいことを平気で言ってしまう。きつい口調で言ってしまう。
他人ではないため、お互いに「甘え」が出てしまい、完全に生活空間が独立しているのではなく、あくまでも「同居」しているのと同じになっているのです。
「完全分離=共同建物での同居」
このように考えてください。
別居と考えてしまうと、かなり高い独立性をイメージしてしまいます。これは大きな間違いの一歩だと私は思います。
(2)住む前はわからない問題点
間取り図だけ見ていると問題なさそうに見えたのに。実際に住み始めると困った。
こういう部分があります。
例えば「寝室」です。
両者の寝室が同一階にあると、お互いのプライバシーが筒抜けになってしまい、気持ちを休める場所が減ってしまいます。
詮索しているつもりはなくても、お互いに
- 何時に起きた
- 何時に寝た
- 夜中に起きていたのはなぜ?
こういうことが気になると、お互いにリラックスして生活できません。
また、「キッチン」も住んでみないとわからない問題を抱えやすい場所です。
家族全員の同意を得て「キッチン」を共用した場合、キッチンの寸法が親世帯と子ども世帯で合わないため問題になることもあります。
また、キッチンは一日の中でメインで使う人の色が濃くでる場所です。価値観の違いから納得できずにイライラが募ってしまう。こういうケースも生み出しやすいです。
(3)独立性と敷地
二世帯が同居するためには、お互いの独立性を高める必要があります。この部分を妥協すると、失敗しやすくなります。
また、独立性を高めるためには、敷地の条件がシビアになってしまう場合もあります。さらに予算面でも難しくなる場合もあります。
こういう場合、どうしてもお互いに二世帯住宅にしたいのかどうかを、改めて考えてみてほしいと思います。
もし、敷地が狭いけれど二世帯住宅にしたいのなら、土地から買い替えることも検討内容に入ってきます。予算がシビアな場合は、ご家族全員でどうすればローンを組み、返済できるのかを検討しなくてはいけません。
場合によっては、二世帯住宅ではなく、近くに戸建て住宅を購入し「近くで別居」の方が安く済むことも地域によってはあります。
失敗しないためのポイントは「独立性」について妥協しないことです。
3: お互いがラクに暮らせる二世帯住宅
ラクに暮らせる二世帯住宅のコツをお話します。
(1)生活スタイルと間取りの関係
親世帯と子ども世帯では生活スタイルが違っているはずです。同じというところは無いと思います。
起床時間も違いますし、出掛けるタイミングも違います。帰宅時間も違えば、休日の過ごし方も違います。
こうした生活習慣の違いを洗い出し、共通する部分があるのか考えましょう。その上で独立性の高い「完全分離タイプ」にするのか「一部共有」「完全共有」のタイプにするのかを決めてください。
共有部分を持った二世帯住宅の場合、リフォームでも新築でも同じですが、間取りを話し合わないといけません。
共有部分の場所、配置を細かく話し合うことになります。
(2)共有スペースと費用の関係
共有スペースが増えると、二世帯住宅へリフォームする場合、新築を建てる場合の費用が下がっていきます。
特に水まわりに関する部分を共有すると、設備は給排水が一つで住みますので、工事費用が減っていきます。
共有スペースの大小は、費用との関係に大きく影響します。
(3)お互いに納得できる部分とできない部分
生活スタイルや価値観の違いから、納得できる部分とできない部分が出てきます。
一致しないから悪いということではありません。まずは違いを知っておき、どう対処すれば良いのかを考えてください。
「黙っていたら上手くいくはず」「黙っていても相手がわかってくれるはず」というのはいけません。後から「わかってくれない!」となります。だって、相手はあなたの心の中を知ることができないからです。
もう一度言います。「一致しない=悪い考えや習慣」ではありません。先に違いを出し、どうすれば納得できるのかを決めることが大切です。
(4)縦割り方式と横割り方式の違い
完全分離タイプをはじめ、二世帯住宅には「縦割り方式」と「横割り方式」があります。
縦割り方式は、左右に分かれています。そのため一階と二階を各世帯が使います。横割り方式は、一階部分に「親世帯」が生活し、二階部分に「子供世帯」が生活するタイプです。
それぞれにメリットとデメリットがあります。縦割り方式のメリットは上下階で発生する音のトラブルが軽減できることです。これは大きいです。
横割り方式のメリットは、広いリビングなどを設けやすいことです。また、親世帯ですと、二階へ上がる負担がありませんので、生活動線がシンプルになりますし、安全面も高くなります。
4: トラブル原因を作らないための注意点
建物の作り以外にも、トラブル原因がありますので注意しておきましょう。
(1)水道光熱費についてはルールを決める
水道光熱費の支払いについてルールを決めておきましょう。
例えば、子ども世帯はお昼間仕事で家にいない時間が長い。親世帯は一日家に居ることが多い。
こういうケースですと、水道光熱費を折半にすると子ども世帯が「どうしていないのに同じ?」と不満のタネを持ってしまいます。
メーターを別々にして、使った分を支払うのが理想です。
(2)ローンの支払いもきちんとルールを
お金に関することは親子でもルールを決めておかないと揉める原因になります。
- 負担する費用
- ローンの支払い開始と終了期限
- 修繕費の負担
こうしたことは、きちんとルール化しておきましょう。曖昧な状態だと、誰かが不満を持ち始めます。
(3)親子と言っても騒音問題はゼロにならない
音に関する問題は必ず発生します。
どれくらいなら許容できるのかを、お互いに知っておく必要があります。また、就寝時間や起床時間が異なってくると、ちょっとした生活音でも気になってイライラします。
音が発生しやすい場所は、お互い離れた場所にするのがおすすめです。
(4)補助金や助成金・税金は事前に確認
補助金や助成金、相続税などの税金に関することは、二世帯住宅を建てる前に確認し、必要な申請を行いましょう。
補助金や助成金は、自治体の窓口で教えてもらえます。税金に関しては会計士や税理士に相談しましょう。
5: まとめ
二世帯住宅で失敗し別居。せっかく二世帯住宅を手にされたのなら避けたい事柄です。
今回の内容を参考にしていただき、二世帯住宅が自分たち家族に向いているのかどうか、改めて考えてみてください。
- 費用負担が減る
- 相続問題が解決する
- 夢の戸建てに住める
こういう目先の理由だけで決めてはいけません。5年、10年「同居」することになるのです。お互いの生活習慣の違い、価値観の違いを理解し納得できた上で二世帯住宅へのリフォームや新築を進めてほしいと思います。