完全分離型の二世帯住宅がおすすめの理由と失敗しない方法とは
二世帯住宅を検討されているのなら、私のこれまでの経験から申し上げますと「完全分離型」がおすすめです。
二世帯住宅は「一緒に過ごしてこそ意味がある」と考えておられる方(主に親世帯ですが)もいらっしゃいます。確かにこの考え方は間違っていません。
しかし、時代の移り変わりによって昭和の初め頃とは、それぞれが持つ価値観も多様になっています。
そのため、昭和の初め頃と同じような暮らしをイメージして二世帯住宅を手に入れると、様々な問題やトラブルを引き起こすこともありますし、表だって問題やトラブルは起こっていないように見えていながら、家族の中で誰かだけが大きなストレスを抱えて暮らしているということもあります。
そこで今回は、先ほども申し上げましたように私のこれまでの経験から、二世帯住宅を検討するとき、最初に考えてもらいたい「完全分離型」について紹介していきます。
1: 完全分離型が二世帯住宅におすすめの理由
完全分離型が二世帯住宅におすすめする理由があります。まずは完全分離型とはどういった二世帯住宅なのかからお話していきます。
(1)完全分離型とは
完全分離型とは、一つの屋根の下(一つの住宅)に、2つの世帯のために用意された部屋がそれぞれあり、普段はお互いに関係を持たないまま暮らすことができる方法です。
この方法は、賃貸マンションやアパートをイメージしてもらえるとわかりやすいですね。
一つの建物の中に、複数の家族(世帯)が暮らしています。
ただ、二世帯住宅には完全分離型以外にも
- 部分共有型
- 完全共有型
と呼ばれる方法もあります。これらの方法は、どこか一部を共有したり、住宅全体を共有したりする形と言えます。
例えば、部分共有型なら、玄関と浴室とキッチンを共有するとか。完全共有型は、昭和の初め頃に多かった「サザエさん」のところのようなイメージです。
このような型があるのですが、次からお話する理由から「完全分離型」をおすすめしています。
(2)プライバシーの確保
完全分離型はマンションと同じようなイメージです。
親世帯と子世帯が隣同士や別フロアで部屋を借りているのと同じような感じです。
こういう感じなので、お互いの家の中での暮らしぶりは見えません。
休日は一日中、スウェットを着てダラダラしていてもOKです。
長期休暇はゲーム三昧でも、家族がOKなら問題ありません。
しかし、部分共有型や完全共有型の場合ですと、これが難しくなりますね。休日でも長期休暇でも、お互いの世帯で価値観や考え方が異なっていますので、
スウェットでダラダラして!
とか
ゲームばっかりして!
とか、本人たちからすると「放っておいてよ」ということが原因となり、気まずい雰囲気になることもあります。
どのような生活スタイルをしていても、そのスタイルが家族にとってOKなら問題ないはずなのですが、生活スタイルや価値観が違っていると、どちらも正義の発言となり収集つかないのが一般的。そこからトラブルに発展し、「一緒に暮らしているのに話すことがない」という大変冷たい家族になってしまうことも考えられます。
こういった必要のないトラブルを起こさないためにも、いつまでも快適に暮らすためにも、プライバシーの確保が行いやすい完全分離型がおすすめなのです。
(3)程良い距離感
いくら仲の良い親子であっても、いつでも一緒にいるとイライラすることもあるでしょう。
特に、親世帯と子世帯では価値観も違いますし、いちいち口出しされるとお互いにイライラすることも増えていきます。
でも完全分離型なら、必要なときしか合うことがありませんので、程良い距離感を保つことができます。
近すぎて遠慮がなくなり、言いたい放題で嫌気がさすよりも、程良い距離感でお互いに必要なときサポートしあえる方が快適だと思います。
(4)ストレス原因が少ない
完全分離型は別々の部屋に暮らしていますから、普段の生活でもストレスが軽減されます。
また、万が一、価値観のズレから親子喧嘩になったとしても、普段の生活は別々なので逃げ場も確保されます。
2: 完全分離型なのに失敗するケースとは
完全分離型なのに失敗するケースがあります。最初から理由が分かっていますので覚えておきましょう。
(1)共用部分
完全分離型なのに、玄関を出たところを共有部分にしてしまったことで失敗することもあります。
玄関まわりは、暮らし方によって変わります。
お勤め世帯のお子さんと、リタイアされた親世帯とでは使い方が違うのです。
そのため、玄関を出たところが共有されていると、どちらかの世帯にとってストレスになることもあります。
(2)光熱費
光熱費問題もあります。家全体の光熱費を1/2にして負担するのは、大変合理的に見えますが、後々問題になる原因です。
というのも、親世帯と子世帯では光熱費の使う量が違うからです。
例えば、子世帯は毎朝シャワーを浴びてから出掛ける。夜もお風呂に入る。でも、親世帯はお風呂だけ。
こういう場合、親世帯からすると「自分たちは使っていないのに負担が多い」となります。
反対にこういうケースもあります。
親世帯は昼間友人を家に呼んで楽しんでいる。子世帯は共働きで家に居ない。
単純なことですが、電気代を考えると親世帯の方が多く使っている可能性が出てきます。でも、電気代の負担は1/2だったとすると、子世帯としては損した気分になる人もいます。
このような理由で失敗するケースもありますから、二世帯を検討するときに光熱費負担のルールを明確にしておきましょう。
3: 完全分離型の二世帯住宅で知っておくポイント
このような失敗するケースもありますので、次のポイントを理解して検討してもらいたいと思います。
(1)横割りと縦割り
完全分離型の二世帯住宅は、横同士で二世帯に割るのか、上下で二世帯に割るのか、2つの方法があります。
上下で割る場合、下の階で暮らす世帯へ騒音の問題が起こりやすいので、間取りで工夫することを忘れてはいけません。
寝室の上に子供部屋を作らないとか、浴室やトイレ、キッチンを作らないとか。
生活リズムが違っているため、生活音も大きく聞こえてストレスになりやすいものです。
横で割る場合は、上下の騒音問題は起こりにくいです。
ただ、隣り合う部分の間取りに注意しておきましょう。
寝室の隣がリビングというのは、よろしくありません。
リビングを隣同士にし、寝室はお互いに離れた場所にしておきたいですね。
(2)視線と距離感
住まいは分離できますが、庭やベランダは共有せざるを得ないこともあります。
こういう場合、お互いの視線が部屋の中へ及ばないような工夫を考えておきましょう。
視線が入りやすいところに窓を作らないのも方法ですし、植木を植えるのも方法です。
4: 完全分離型は親の死後も考えて計画
すぐではなくても、いつかは考えなくてはいけない親の死後。
どのように二世帯住宅を使うのか、計画しておきましょう。
(1)賃貸
賃貸の計画があるのなら、横割りの方が使いやすいかもしれません。
また、玄関前や庭も分離することができるように計画しておくと便利です。
(2)子世帯で使う
すべてを子世帯が使うという方法もあります。
お家でサロンや学習塾、料理教室などをやってみたい方なら、別々に設備があるので便利に使えます。
(3)孫世帯との二世帯
二世帯を引き継ぐ方法です。こればかりは孫世帯の考えもありますから、親の一存で決めることはできません。
5: まとめ
二世帯住宅を検討されているのなら、最初に「完全分離型」から考えてみてもらいたいです。
その上で、費用や敷地の関係で無理そうなら、部分共有型を検討しましょう。
完全共有型もありますが、大家族での暮らしになれている方でないと、なかなか難しいと思います。
それぞれの価値観やライフスタイルが多様化している時代です。距離を離すための完全分離ではなく、程良い距離でお互いが快適に暮らせるための分離と考えてください。